「尊い人達」エピソード・1
少し前の話しになりますが、私が訳あって台車で少し重い荷物を知人宅に運んでいた時の話しをしたいと思います。
その知人宅は少し坂の上にあり、その坂の下は広い国道になっており、交通量もかなり多い道でした。
インターホンを押し、2つあった荷物の1つを玄関前に運んで行き、次の荷物を取りに行こうとして台車を見ると、門の前に置いておいた台車が無いのです!私はビックリして、直ぐに門の所に走りました。
なんと、台車が知人宅の前の緩やかな坂道を下っていっていたのです。坂の下には交通量の多い国道。そこに台車が突っ込んでいけば、大惨事です。私は、急いで走りましたが、到底追い付きません。
(あ~、もう私の人生、終わった)と、その時本気で思いました。
その時です!国道の手前で、その台車が止まったのです!どこから現れたのか、作業服を着た男の方が滑り込みながら体を張って、その台車を止めてくれたのです!
私は直ぐに駆け寄り、何度もお礼を言いました。その方は、こう言い返されました。
「荷物が潰れてしまって、ごめんなさい」と。台車が傾き、荷物が台車から落ちて潰れたことを気にかけてくれたのです。
私が不注意で台車を滑らせてしまったのに、体を張って止めてくれた上に、こちらの事を最初に心配してくれた方。そして、何事も無かったように仕事に戻られていく、その後ろ姿に、深い感謝とさりげなく人の為に動ける人の尊さを感じました。
今でも、その場所を通ると、その方の事を思い出します。滑り込んだ時の足は痛くなかったかな、もっともっとお礼を言えば良かったな、お名前を聞いておけば良かったな、と。
『有難うございました!』何度言っても足りないぐらいの『尊い人達』。心が洗われていきます。